短刀「片山一文字則房」 鎌倉中期

    宇宙暦十三(昭和五十六、西暦一九八一)年
      大阪府登録 九二三五九

      全長 一尺二寸二分(三十七センチメートル)
      刃渡り 八寸五分(二十五センチ九ミリメートル)
      反り 三厘(一ミリメートル)
      巾 一分七厘(五ミリメートル)
      元幅 七分五厘(二センチ三ミリメートル)
      元重 二分(六ミリメートル)
      先幅 五分六厘(一センチ七ミリメートル)
      先重 一分三厘(四ミリメートル)
      重量 四両二匁(一五七グラム)

       平造り、庵棟、目釘穴二つ。反り僅かに付き、ふくら枯れる。地紋は柾目肌(板目じゃないと思うがなあ)、杢目などは見えない。波紋は直刃に近い小丁子、大丸。刃中ににえよく付き、金筋長く掛かる(写真の矢印辺り)。なかごきり、「則房」とのみ銘があり年代は無い。


     片山一文字則房は、鎌倉時代の名工だそうです。オークションで七万円ちょっとで競り落としましたが、どうしてそんなすごい刀が私の所に来たものやら。届いた品はかなりの美品でしたが、白鞘はどうも新し過ぎるように見えたし、書かれた文字も現代風の楷書なので、後から作ったものでしょう。そもそも白鞘に「備中」とあるのはいいとして、「文明頃」と書いてあるのは室町時代になってしまいますから、鎌倉じゃなくなっちゃいます。
     それで、時代から考えて保存状態は非常に良かったのですが、惜しむらくは峰に僅かな欠けがあったことと、切れ味が悪かったことで、そこを直す為に砥いだら刃紋の沸、においが見えなくなっちゃいました。本当に性懲りも無いなあ。欠けた所だけ直し、刃はタッチアップ程度で済ませておけば良かったのに。後悔先に立たず、です。
     ただ、全体の形を崩した訳ではないので、その後一念発起、今度は困った時の並川平兵衛商店頼みで刃艶を買い求め、指に切り傷を付けながら磨いたら、見事な沸が現れました。沸出来の刀は初めてなので喜び勇んで金肌を差し直し、刃取りも気を付けてやってみたらこんな風に綺麗になった訳です。もちろんプロの仕事には及びませんが、私の手にあるうちは「守り刀は私と共に成長する」で行こうと思います。
     それにしても、こういうことがあるといつも思うのですが、世界中で、一体幾つの美術品が素人の手に渡っているんでしょう。何百万もする品ならともかく、オークションでは、結構普通の人の手が届く値段で名刀が出回っています。
     一番まずいのは、私のように生半可な手を入れてしまうことなんでしょうが、とりあえず重要刀剣指定とかでない(もっとも、それだったら高くて手が出ないでしょう)のが救いです。でも、鎌倉中期の名工だもんなあ。本当はいけないんじゃなかろうか、このままじゃ。
     というわけで、その後専門家にお願いしました。




本文に戻る
銃器室に戻る