純銀粘土に関する覚え書き
最近、例の短刀の修理から、純銀粘土という物の存在を知りました。これ、写真の定着の過程で出た銀イオンの廃物利用で出来たそうで、銀の微粒子に樹脂を混ぜて融点を下げ、焼いてしまうと樹脂は燃えて飛んでしまい、99.9パーセントの銀になるという素材です。後で判ったのですが、銅や青銅のもあるとか。金のも出来るといいんだけど、高くなるだろうな。せめて、真鍮は欲しい。
それで、ネットで検索してみると色々なことが書いてあるので、詳しくはそちらを参考にして頂くとして、ここでは私自身が作っている過程で気が付いたことを書きます。この材料を使う方の参考になれば幸いです。ただし、以下はあくまで私の出した結果ですので、もしもお試しになる場合、一応実験をするなりなんなりして、自己責任で行って下さい。
- まず、専用の炉だの上に被せる蓋だのは要らない。鍋物用の焜炉で充分です。乾かして磨きも終えたら、餅焼き網(作る物によってはもっと目が細かい品。専用でも、300円位)に乗せて、中火で焼成を開始します。ある程度熱くなると網が赤く焼けますから、そうしたら火を落として、上に何か陶器の入れ物を被せ、五分焼けば充分。その時下から覗いてみて、対象が真っ赤になっていれば尚良いでしょう。私はこれで充分な強度を得ています。
- その時使う陶器の入れ物は、もちろん余り惜しくない物を使用すべき。私は1つ割りました。
ただこれは、どうも水を掛けて冷やしたのが不味かったと思う(陶器は大丈夫だと思ったんだがなあ。やっぱり硝子と同じでしたぜ)ので、ゆっくり冷ませば大丈夫だと思います。それでも高価な物は止めましょう。グラタン皿の小さいのがあれば、あれは元々オーブンに入れるように作ってあるので丈夫かも知れません。私は実際そうしています。もちろん、焼成温度は全然違いますが――。
- これはネットで裏も取ったのですが、この粘土はきちんと焼成しても純銀と同じ強度は得られません。何故なら、樹脂が入っていた所が非常に細かい気泡になってしまうからです。水が染み込むことすらあるそうですから、食器にも向かないとありました。
したがって、私がやったように歪んだ指輪を曲げて直そうとかすると、十中八九割れます。形は最初からきちんと作りましょう。もちろん、長い棒のような作品は止した方が無難です。何か芯材を入れて強度を上げられればなあ。
- 収縮率も、結構莫迦に成りません。案外小さくなってしまいます。15パーセント位だそうですので、後で型を取って複製すると更に小さくなります。ライターなんぞに貼り付けたい場合、そこまで計算しないと不恰好になります。特に指輪は大変難しいので、この素材用の指輪用具を使った方が無難かも。でも、指輪をそんなにバンバン作ることって無いんですよね。
- 根本的に、値段は高目です。50グラムの銀として一万円余り。小さな物を作るには良いのですが、大作はお金が掛かるし無駄が出ます。なるべく小さく、これでないと出来ないものに使用を限りましょう。
- そこで対策なんですが、私は一番最初に買ったのがペースト状だったので、その入れ物があります。そこで、削った時の屑や、焼成前の失敗作は全部此処に入れてとってあります。かなりの量が集まるので、削るのはなるべくナイフ(鑢と違って目詰りせず、後で集め易い)、下に上を敷いて粉も全て回収しましょう。これで大分無駄が無くなります。
あ、そうだ。このやり方に則った場合、焼いてしまったらもう使えません。それに焼成後は成型もし難くなるので 、なるべく焼く前に形は完成させた方が良いです。
- 型取り剤を使って複製しようとすると、外す過程でしばしば割れるというか、ここが結構難しいです。考えられる方法として、一緒に焼いても大丈夫な熱に強い型取り剤を使うか、いっそ燃えて無くなってしまう素材でやればいい筈。ただ、私がやってみたら、溶けたシリコンが焜炉を汚してしまいました。つまり、蝋燭か何かで、外見だけ別に焼いておけばいいことになります。もっとも、ダイオキシンとかが心配といえば心配なんですがねえ。
今のところ、この位かなあ。また何か気付いたら、書き足します。
宇宙暦44年3月8日
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