かゆい話


 夏に寝床に入り、部屋の明かりを消して、さて寝ようとする時――。もっとも腹立たしいのは、どこからともなく聞こえてくる、あの羽音です。いわずと知れた「蚊」ですが、あわてて起き上がって蚊取り線香を探すと、大抵切らしています。しかたなくふとんに戻って頭からタオルケットをかぶれば暑くて息が苦しいし、さればとて一匹二匹ではないらしく叩きつぶすのも容易ではありません。更に腹立たしいのは、夜中にかゆさで目が覚める時です。
 蚊に刺されてもっともかゆいのは、というか、いやなのはどこでしょう。私なんか、やはり足の裏ですね。ここは掻くとくすぐったさがあって不愉快だし、第一他の部位よりも皮が固くて歯が立ちません。これについで不愉快なのが手の平で、どうしてこんな所を刺しやがるのかと、まったく毒ガスでもまいてやりたくなります。
 ところが、これが二の腕やふくらはぎだともう少し始末がよくなります。掻けばまあ気持ちがいいし、すぐにおさまります。ただし、だからといってあまり掻きむしると皮が剥けて痛くなりますから、どこかで片を付けねばなりません。そこで、そのぷっくりとふくらんだところに、爪で十字型の痕を付けてフィニッシュを決めるのです。
 この行為は、誰に教えられるわけでもなく、大抵の人が経験しているようです。まさか生物学的な本能の中にこんなことが刷り込まれているとも思えないのですが、どういうわけか誰もが「あるある」と答えます。確かGON!だか何だかでこのことを考察していたような気もしますが、今のところよくわかりません。問題はこの形です。他にも、八文字にするとか、平行線をたくさん引くとかも考えられそうですが、なぜ十字型なんでしょう。どなたか、他の形を愛用してらっしゃる方はいらっしゃいませんか。


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