のっけから題名に反するが、マニアや通とか言われる人達の言うことは原則として正しく、耳を傾ける価値は充分あると思う。人が何かの道で一所懸命にやってきたことはそれだけの重みがある筈だし、その過程では数え切れない程の失敗があっただろう上での言葉だからだ。ただしこれは、あくまで背景が同じであればなのではないか、というのが今回書きたいことである。
例えば写真左はセレストロンのズーム式接眼レンズ、右はビクセンのズーム式双眼鏡で、私が普段使用しているものである。ズームに関しては色々な問題があって、ユーチューブの動画でも双眼鏡マニアは見向きもしないなどと言われているが、私はこれで充分満足している。特にセレストロンの方は、持っている接眼レンズの中で一番綺麗に見えるかも知れない。また、天頂プリズムはスカイウォッチャーの正立式を使用しているが、これも何度見比べても、普通の天頂ミラーとの差が分からないのである。これには次のような要因がある。
・ まず第一に、望遠鏡の性能が低い。私の望遠鏡は口径が70mmである。予算の都合でこうなったのだが、これでは140倍までしか出せない。正立プリズムは高倍率で差が出るらしいし、スカイウォッチャーのプリズムはこれしか出ていない。つまりは、大口径の反射型でも同じもので見る訳だから、それなら違いがわかるのかも知れないが、私の望遠鏡ではそこまでの高倍率では口径の問題の方が大きいのである。
・ 次に、私の視力が低い。天体観測を始めた子供の頃はともかく、今では眼鏡やコンタクトレンズが手放せない。更に、白内障まで出ているらしい。これではそこまでの差が見分けられないというのも充分に考えられる。
・ また、双眼鏡の方については、マニアの人達はそれ自体が趣味であり、色々な機種を取っ替え引っ替え使われているのではないかと思う。目的別に色々やるのならそれもあるだろう。ただ私は、旅行先で景色と天体の両方を見ようとしている上、車の免許がないのである(妻は持っているが、旅行に行く程の長距離はとても運転出来ない)。となれば、やはり一つで何でも出来てそこそこ見えるズームは、利便性の点で勝ってしまうのだ。
前にこちらのブログに書いたことだが、赤ワインを冷やさないで飲むというのは、あくまでカーブできちんと保存されているという「背景」があってこそだと思う。そういう赤ワインは、そもそもある程度冷えたままで出されるのだ。保存の悪いワインを生ぬるい状態で飲んでも、決して美味しくはない(今は酒は止めているが、以前そう思った)。また、ビールをきんきんに冷やすのは邪道というのは、ドイツが日本より寒い国だという「背景」があってこそではないか。日本では、夏に喉の乾きを止める為にビールを飲むのだ。だったら冷やした方が良いに決まっている。私自身、教員時代に同僚からパソコンの選び方を訊かれた時は、CPUだの何だのの性能はそこそこでいいから、キーボードの打ち易さ、画面の綺麗さ、修理のし易さなどで選べと言っていた。大部分の教員はワープロと成績処理にしかコンピューターを使わず、プログラミングも作曲もしないからである。音楽の先生は、私なんぞに訊かずとも自分で調べていた。
物事には全てこうした「背景」がある。多分、マニアの人達と私は、まず「一つのものに対する入れ込み度」という「背景」が違う。私はそんなに耳が良くないので、オーディオでもMP3とハイレゾの区別すら付かない。更に、何でもかんでも手を出すというノンセクションオタクなので、予算の配分もある。だから、一つのものにそこまで金を掛けられないのである。君子は多能を恥ず(これは「つまらないことに」という条件があるみたいだが)というが、まあ多能なら問題もなく、私みたいにあちこち手を出してちっともものにならないのは決して「褒められた」ことではないのだろう。だが、他人の評価を気にしなければ、何、これで楽しいからいいのである。このホームページも、私が色々中途半端に手を伸ばした結果の集積だ。それで個人で作ったものとしては、様々な底の浅い部屋ばかり増えてしまった。こういう人間がやる限り、一つ一つの道具はそこそこの安物になってもいいと思っている。
とまれ、マニアの人達が色々と正しい情報をくれるのも事実である。それには本当に助かっている。そういった専門家の人達の情報を集めて、出来る限り多方面に無駄を少なく楽しめれば、こんないいことはないと考えている。