Knock, knock, knock, knock on ...
水谷わるた
ノックの音がした。
エヌ氏は、無人島を描いていた手を止めた。最初にお客さんの好みに合わせた環境で歓迎することが、エヌ氏の大切な仕事の一つなのだ。そこには、先ほどまでは銀幕が張られていたのだった。
まあ、このくらいなら合格かな、それだけ確認して、ドアに近づいた。すると、待ちきれなくなったのか、扉の向こうから
「おーい、でてこーい」
と叫ぶ声が聞こえた。エヌ氏は、そんなにいそがせるなよ、と小声で言うと、肩の上の秘書が、
「いらっしゃいませ。ようこそおいで下さいました。長旅でお疲れのところ、お待たせしまして誠に申し訳ありません。今、お開けします。」
と、相手に伝えた。扉を開けると、おにぎり型の卵に、目とくちばしと細い足のついたタマゴッチのような不思議な生物が立っていた。
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K K
あのくちばしでノックしたのだろうか。どんな生物にしても、ここに来るものは、優しい目をしているな、あの風景は、気に入ってくれるだろうか、エヌ氏は、そう思いながら、その見慣れぬ生物を迎え入れた。
そっと閉じられた扉の外側には、Heaven's Door と書かれていた。