単眼鏡の最短合焦距離を改良する


 先にお断りしておきますが、これは失敗例です。原因は加工にあるのではなくもっと根本的な間違いで、その点については最後に記載しておきました。お含みおき下さい。

 左はビクセンHZ10-30×21という単眼鏡です。ポケットにも入る大きさのズーム仕様で、普段ベルトに付けて持ち歩いています。ちょっとした遠い物を見るのに便利。ただ困ったことに、美術館などで使うには最短合焦距離というのですか、近くの物に焦点が合わず、少なくとも2メートル余りは離れないといけません。もう少し接眼部が引き出せればいいのですがねえ。
 ということですが、もちろんそこを改良するのはとても無理です。そこで何とかもっと近くで使えないかと思い、先端に嵌めるマクロレンズを作ってみました。

 まず、百均で一番焦点距離の長い老眼鏡を買ってきます。こういうのってレンズがプラスチックなので、自分で切って加工出来ます。半田ごてで丸く切ったら電動やすりで形を整え、紙の筒に入れてみました。これを対物側に嵌めて見ると、上手く1メートル位の距離で使えるようです。そこで、以前に買って大きさの合わなかった、エアガンの照準器に使う蓋に仕込むことにしました。

 左の板は、コンパクトディスクのケースに入っている黒い板です。これも鏝で切り抜いて鑢を掛けます。
 右はそれぞれ、厚紙に黒いビニールテープを貼った物(後述)、加工した凸レンズ、今のCDケースから切り抜いた板です。

 黒い円盤にレンズを当ててビニールテープで固定し、右のように照準器の蓋に入れます。此処は下に書いた理由で、接着はせず嵌めるだけです。

 次に、上のテープを貼った厚紙を巻いて、中に入れます。これは蓋の大きさが僅かに大きいので、嵌めた時動かないようにする為です。この部分も、接着剤とかで固定してはいません。好きな時に外して、プラスチックレンズに傷が着いたら交換する為です。両面テープで軽く留めただけで、結構しっかりします。
 最後にネックストラップを着けました。この単眼鏡、元々付属品にストラップが付いていた筈なのが見当たらない。だけど、不思議なことに装着部分が無いんだよなあ。同じシリーズのHZ7-21×21にはあるみたいなんだけど。困ったことに、説明書も何処かにしまい込んじゃった。
 それはともかく、矢印の部分に結び目を作っておきます。

 出来上がりました。さっきの結び目、この単眼鏡は三脚の螺子穴を持っているので、此処に紐をねじ込んで落ちにくくする為です。
 使う時は首から下げます。蓋の開け閉めは出来ますが、装着すると元々付いていたケースが閉じません。普段は望遠鏡として使う方が多いので、外しておきます。本当は蓋の方にレンズを着けて、開け閉めで遠近を切り替えるべきなんでしょうが、そうすると二重のキャップが必要になり、益々ケースに入りません。そもそも、上手く着ける方法が見つからない。

 覗いて見ると、被写界深度がかなり狭くなり、50センチから1メートル位でないと焦点が合いませんが、その範囲では良く見えます。問題は、1メートルから2メートルの間に空白が生じてしまうことですが、美術館等ではこの位で充分実用的でしょう。本当は、もっと焦点距離の長い、薄いレンズが手に入ればいいのですが、今のところこれが限度。
 で、素人加工ですので光軸のずれがあるかも知れませんが、私にはよく判りません。また、レンズがプラスチックなので製作の過程で多少傷が付きましたが、対物側の傷や汚れって、余程のことがないと見えないんですよね。そうでないと、反射望遠鏡が成立しない。これで仏像とかを良く見られるようになりました。
 で、実際に使ってみると、視野が大変狭いです。対物レンズの焦点距離を短くした分倍率は下がりますが、近くに寄る為相殺。使い方には限りがあります。小さな対象物がある程度離れている(ガラスケースなど)場合なら、充分実用的というところ。調べてみると、美術観賞用は4倍から7倍くらいが適切らしく、この製品は10倍から30倍ですから高過ぎますね。ということで、冒頭に書いた通り、これは失敗を認めるしかないようです。

宇宙暦53年4月7日


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