楽器に関する覚え書き

こきりこ――kokiriko


 改めて目次を眺めてみると、このホームページに挙げてある項目の中では、打楽器が圧倒的に少ない。どうしてなんだろうと考えてみるまでもなく、つまるところ、余り使い道がないのである。ステージに立つことがほとんどない身としては、どうしても一人でそこそこ楽しめる楽器が主体になってしまうので、鍵盤や弦楽器が多くなるのは已むを得ない。旋律楽器でないものを多く含んでいる打楽器は、どちらかというと、手すさびになってしまうのだ(勿論、実は私にとっては、全ての楽器が手遊びの域を出ていないが)。

 ということで、こきりこも四竹と同じく、どちらかというと旅の記念みたいなものである。旅行で自分のために買うものが余り嵩張ると邪魔になるし、後で置き場所にも困る。このくらいの大きさのものが丁度良いのだ。これは富山に旅行した時に買った。
 今、「このくらいの大きさ」と書いたが、実際「こきりこ節」には「こきりこの竹は七寸五分じゃ」と歌われている。つまり、23cm程か。これよりは「長いは袖のかなかい(邪魔)」になってしまう。というのはこの楽器、先端だけを打ち合わせるのではなく、バトンのように操りながら反対側も叩くのである。動画をご覧いただければ分かると思う。結構複雑だ。
 とはいうものの、これが本当に正しい叩き方のかというと、よく判らないのである。実はバスの中でガイドさんに習ったのと説明書にあった図では、順番が微妙に違っている。この図がまた判りにくい上に、インターネットにもいい動画が見つからなかったのだ。
 それで知り合いの和太鼓の先生にヴィデオを借りたのだが、これも教則というわけではなく、実際の祭の舞台中継。こきりこを叩いているところを何とか探し出し、見様見真似でやっただけである。だから我ながら、あんまり信用出来ない。こういう時代なのだから、もっとネットで叩き方とかを見せてくれれば、演奏者の裾野を広げ、ひいては文化の保存にも役立つと思うのだが――

 ところで「こきりこ節」だが、「貝殻節」と並んで現代の歌手にも人気があるようである。マイク真木やひのき屋が演奏している。この前者の版では「想いと恋とを笹舟に乗せりゃ、想いは沈む恋は浮く」と歌われていて、随分現代的な歌詞だなあと思っていたら、何とマイク真木の後付けではなく、元々の歌詞にちゃんとそうあるのだ。ネットには「日本最古の民謡」とあり、これには少なからず驚いた。

宇宙暦40年7月12日)


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