「チューブラー・ベルズ2003」DVDオーディオ版

マイク・オールドフィールド

    Part One

    Part Two

      Introduction
      Harmonics
      Fast Guitars
      Peace
      Basses
      Bagpipe Guitars
      Latin
      Caveman
      A Minor Tune
      Ambient Guitars
      Blues
      The Sailor's Horn Pipe
      Thrash
        Jazz
          Ghost Bells
            Russian
              Finale


             意外なことには、CD(悪名高いコピーコントロールCD)に付録でついていたDVDは、これのダイジェストではない。有名なあのオープニングテーマのベースのリフが、CDの付録では明確に途切れる部分があるのだが、これにはそれがないからだ。また、付録版に収録されたプロモーションビデオは入っていないので、仮にこちらを購入しても、CDを手に入れる価値がまったくないわけではない(多少違う抄録音と、プロモーションビデオに2千円ちょっとの価値を見出せば、だが)。
             インタビューではオールドフィールド自身はこの録音について、少なくともCD版から何かを引いたり足したりしてはいないと言っている。もちろん克明な確認は困難である。しかし、よほどのマニアでもない限り二つの違いはわからないだろうから、もしもDVDを再生出来る環境にあるのなら、CDではなくこちらをお薦めする。DVDオーディオの常として、ドルビーデジタルとDTSによるDVDビデオトラックも収録されているので、プレイステーション2でも再生は可能だ。
             ただし、このビデオ版の方は、なぜか再生機によっては途中で突然断ち切れることがあった。DVDオーディオと一緒に収録していることが原因なのかも知れない。また、ビデオ版はオープニングの最初が途切れるので、一回スタートしてからスキップで頭に戻る必要がある。これはプレイステーション2ではうまく行かなかった。
             このDVDオーディオには、付録として「チューブラー・ベルズ2」と「チューブラー・ベルズ3」のライヴヴィデオと「チューブラー・ベルズ」のデモというのが付いている。ヴィデオの方は既に出ているDVDと同じ物の一部だから、もしも持っているのならあまり価値はない。「チューブラー・ベルズ」のデモというのは、本当に未完成な梗概のような録音である。ヴァージンで録音する前の下書きみたいなものと思えばいい。もちろん音楽的には完成したものの方がずっと価値がある。ただし、書誌学的には非常に貴重なものである。

             「チューブラー・ベルズ2003」は、まさにデジタル時代の申し子のように作品である。そもそもオリジナルの「チューブラー・ベルズ」自体が、当時のマナースタジオの最新技術を使って録音されたものであり(ただし、テープはいいかげんなものだったとか言う話も聞いているが)、もしも現在のデジタル録音装置(とコンパクトディスク)が存在していれば、オールドフィールドは迷わずそちらを使っていたことだろう。
             したがって、現在のマイク・オールドフィールド(録音のみならず、演奏技術も上がっているはずである)があの録音に満足せずやり直しをしたいと思うのも当然と言える。これだけ手間のかかる曲(というか、方法)を、ほとんど編曲を変えずに録音しなおすこと自体、非常に珍しいことだ。

             それにしても、これほど実質上の処女作に捕らわれた人がいるだろうか。正規に出回っている「チューブラー・ベルズ」だけでも、オリジナル、オーケストラ、「Boxed」、「エクスポウズド」ライヴ、「2003」と五種類、その他、、別の項で述べるように、同じものとして称される中にすら録音違いがある。更に、「チューブラー・ベルズ2」と「3」、「ミレニアム・ベルズ」、「遥かなる地球の歌」の中の「チューブラー・ワールド」、「オマドーン」パート1の最後のリズム、「呪文」と「ギルティ」のメインテーマ、「ギルティ」ライヴの最後、「ファイヴ・マイルズ・アウト」の中への引用など、実に様々な箇所に「チューブラー・ベルズ」の断片が見られる。
             今望むことは、このオリジナルの「チューブラー・ベルズ」を、妥協無しにライヴで演奏してくれることである。「2」と「3」は既にそのようなコンサートに掛かっている。しかし、オリジナルだけは、どうしてもどこかで妥協したような、あるいは大きな改竄が加わったライヴしか存在していない。「2003」は、今度こそそのコンサートが可能なことを示している。海賊版などではない、正規の発売でのライヴアルバムを期待する。

            宇宙暦36年3月4日


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