Water Bearer

      Sally Oldfield

        BRONZE 610 164-217
Water Bearer
Songs of the Quendi:
Night Theme
Wampum Song
Nenya
Land of the Sun
Mirrors
Weaver
Night of the Hunter's Moon
Child of Allah
Song of the Bow
Fire and Honey
Song of the Healer

 このアルバムが出た頃、マイク・オールドフィールドはちょうど「呪文」という大作をリリースしていた。そこで、好むと好まざるとにかかわらず、二つを比較するはめになってしまったのだが、当時の感想ではやや、「Water Bearer(水の使者とでも訳すのだろうか)」の方に分があったと思われる。ただ、今になって考えてみると、これは「呪文」がちょっとやそっとで理解するには余りに長すぎた為で、今ならもちろんその良さはわかっているつもりだ。もちろんそれでも、「Water Bearer」がプログレッシヴ/トラッド・ロックの傑作であることは変わらない。それは美しく、親しみ深い旋律と音に溢れている。
 さて、「Water Bearer」は、トールキンの「指輪物語」と「シルマリルの物語」を下敷きにしている。しかしそれはいわゆる「標題音楽」というよりは、自由なイメージの発展というべきものだろう。プログレッシヴ・ロックであれだけ重要な位置を占めるシンセサイザーはむしろ裏方に回り、サリー・オールドフィールド自身の声やギター、ピアノなどのアコースティック楽器が彼女自身の手で奏でられていく(もちろん、若干の共演者もいるが)。今思い出したのだが、最初私は、そのギターをマイク・オールドフィールドが弾いていると思ったのだ。実はサリーの演奏だと知ってとても驚いた。それほど二人のギターの音は良く似ているのである。
 しかし、何よりも重要なのは、サリー・オールドフィールドはあくまで「歌手」だということだろう。別の所に「マイク・オールドフィールドは何よりも作曲家だ」と書いたが、それと同じ意味でサリーは「歌手」である。その声は透明で純粋、このアルバムの曲はそれをもっとも効果的に響かせるように作曲されている。「指輪物語」またはマイク・オールドフィールドのファンなら、ぜひ手に入れておくべき一枚であろう。
 なお、最近になってこの中の「三つの指輪は空の下なるエルフの王に」がリミックスされた。これはシングルにもなっており、いくつかのヴァージョンが存在している。

宇宙暦28年9月9日)




「遥かなる地球からの歌」に戻る