II.皇姫
    III.妾姫

     説明の都合上、この二つは合わせて絵解きをしてみたい。というのは、ムアドディブ伝説にくわしい人ならすぐわかるとおり、「皇姫」と「妾姫」は明らかに対をなすカードだからである。
     アラキス事変のおさまったあと、ムアドディブはコリノ家のイルーラン姫と結婚した。とはいうもののそれはあくまで名義上の妻に過ぎず、ムアドディブは生涯イルーランを愛することはなかったという。彼の愛を独占したのは妾姫のチャニのほうであり、彼女こそがかの神皇帝レトの実母だったのである。
     皇姫のカードに書かれたイルーランは室外にいる。これは彼女が表の存在であることを意味する。反対に妾姫チャニは室内に立っており、それは裏の存在の象徴だ。しかし、二人の顔にあらわれている表情は、まったく対称的である。イルーランは悲しげにうつむきながら地面を指さし、両手の本とペンは文学者の持ち物をあらわす。我々はイルーランが文学の才能にすぐれ、ムアドディブの記録係だったことをよく知っている。そしてチャニ、彼女は晴れやかに上を向き、手には水の象徴であるポットを持っている。
     あなたはこの二枚のカードに、女性の「愛」の持つ二面性を鮮やかに見ることだろう。それはまた、すべての人の「生き方」の二面性でもある。

II.皇姫

    正位置の意味

      精神的な愛、芸術、学問、知識、文学、

    逆位置の意味

      見せ掛けの立場、報われぬ愛、無教養、

III.妾姫

    正位置の意味

      肉体的な愛、快楽、本質的な立場、(女性の)美、

    逆位置の意味

      淫乱、好色、欲望、

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