太陽黒点の電子観測


 周知のように、太陽黒点の観測にはある程度の危険が伴います。私が中学生の頃は、接眼側にサングラスと言うフィルターを着けて目視したものですが、これはフィルターが融ける事故があったそうです。ハーシェルプリズムなんてのもありましたが、これも現在はカメラ用らしい。やはり、事故が多発したのでしょうか。そこで使用するのが、こちらの投影板です。これなら一応、目には安全に黒点が観測出来るというわけですが……。
 実はこれでも完全ではありません。ある程度の時間が経つと、接眼レンズを傷めるんです。実は前に一度、レンズのプラスチック部分が融けてしまったことがありまして。本当は専用の望遠鏡があればいいのですが、これは高くて買えないし、置場所にも困ります。普通の望遠鏡の対物部に取り付けるフィルターもあるそうですが、万が一外れたり、着け忘れて覗いたら大変です。
 ということで、電子観望を使うことにしました。これなら長時間でも安全だし、少なくとも目を傷める心配はありません。更に、写真のようにテレビに映すことも出来てしまいます。以下、私がやっている方法をご紹介しますので、何かの参考になれば幸いです。



 まず左右の写真は、天体望遠鏡に太陽撮影用フィルターを取り付ける為のアダプターです。樹脂粘土と百均の下敷きで作りました。これは、下にある望遠鏡の蓋に合わせて作ってあります。

 次に、マルミ光機ND-100000フィルター(はて、リンク先の一覧表が空白になっている。品切れかな)を蓋の絞りの部分に被せます。

 更に上から上述のアダプターを填めてやります。本当は粘土剥き出しじゃなくて色を塗りたいのですが、デザインが決まってません。もちろん、性能には何の影響もないのですが。

 望遠鏡の対物部に装着したところ。樹脂粘土は軟らかいので、少しきつ目に作れば落ちることはありません。

 と、これで左のカメラ(サイトロンケレス)を望遠鏡に取り付けて目出度く観測といきたいところですが、一つ問題が起きました。私の望遠鏡(スカイウォッチャースタークエスト70SS)の焦点距離は500mmあり、この目的には長過ぎるのです。右写真のように、太陽が観測ソフト(シャープキャップの64ビット版を使用しています)の表示枠からはみ出してしまいます。本当はレデューサーレンズを入れればいいのでしょうが、結構高い。

 そこで、少し工夫をします。左のように、以前に掃除に失敗して傷つけてしまった接眼レンズを分解して、凸レンズ(これには傷がありません)を取り出します。一緒に写っている水色の布は、使い古しのレンズ拭きを縫って作った袋です。
 これを右のように、SVボニーの延長菅(これもカタログに見当たらないなあ)に入れます。分解したレンズは複数の凸レンズが組み合わせられていましたが、入るのはこれだけでした。ただ後述のように、運は良かったようです。

 カメラを挿入して、望遠鏡に取り付けます。少し光路長が必要なので、正立天頂プリズムを咬ませてありますが、こうした方が操作もし易いようです。

 これで右のように、全体が入るようになりました。前述の「運が良かった」というのは、このレンズが丁度良い倍率を出してくれたことです。実はカメラを延長管に挿す深さで更なる倍率調節も可能ですが、余り低すぎると黒点が見にくく、高過ぎるとはみ出す上に地球の自転でどんどん移動してしまいます(モータードライブも高くて導入していません)から、このくらいが一番いいかな。
 写真では大きな黒点以外、今一つ見えませんが、コンピューターの画面ではもう少しちゃんと目視出来ます。これは人間の目が、地球の自転で移動していく画像を補正している為でしょうか。元々私がやりたかったのはリアルタイムでの直接観測で、固定した天体写真の撮影ではありませんから、これで充分。写真なら、他の人達が撮ってくれているのを見た方がずっと綺麗です。ただ、その時点での直接観測はやはり楽しいですよね。



 これで時間制限を気にせず、安全に黒点観測が出来るようになりました。気をつけなくてはならないのは、フィルターを着けずに直接カメラに太陽光を当てると、やはりカメラを傷めてしまうこと。何回か、あっと思った場面があって、その度にすぐに外して事なきを得ていますが、これはくれぐれも気をつけなくてはなりませんね。

宇宙暦56年1月13日改


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