伊勢千子村正

諏訪工芸(日本) 29,000円

全長1040mm/刃渡り740mm 鋼材/アルミダイキャスト、薄刃仕上げ  柄/本鮫肌、錦糸


 実はこれ、ナイフの部屋にしようか武器の部屋にしようか迷ったので、両方からリンクしてあります。何せ、模造刀ですから。まあ大目に見て下さい。

 さて、妖刀と言われる村正も、SFやファンタジーの世界では、「ウィザードリィ」を始め「魔界転生」や「さくや妖怪伝」のように、名刀・正宗よりも人気があります。これは多分このジャンルでは、キリスト教を扱った作品も大抵は神にくみするよりは、グノーシス主義に基づいたみたいな悪魔に寄った話があることと関係があるのでしょう。今日の言葉にも書いたように、妖刀は使いこなせさえすれば名刀よりも遥かに有力な武器だし、その点では我々の持つ文明ですらが妖刀としての性格を持っています。我々は妖刀を無闇に恐れるのではなく、それを使いこなす強さも身に着けねばならない。これは私の持論でもあります。

 さてこの刀は模造刀ですから、もちろん切れません。ただ、一応丈夫な拵えになっているので、居合いの練習には使えます。私は居合いは全然出来ませんが、抜いたり素振りをしてみると、確かに重いですね。高校の頃の体育でやった竹刀とは、比べ物になりません。
 全体としては地味な出来で、ご覧のように黒を基調とした落ち着いた意匠です。私は日本刀の見立ては全然出来ないので、ガンダムのプラモデルみたいな意味での出来の良し悪しはわかりませんが、刃紋はやや乱れた不揃いなもので、ここに村正の特徴があるそうです。切れることはなくとも、やはり突いたら刺さるだろうし、叩いたら骨ぐらい折れちゃうでしょうから、扱いには充分注意が必要ですね。
 ただ、やはり武器というものは実際に使うつもりがなくても、何だか飾っておきたくはなります。このコーナーに掲げてあるナイフはすべて武器ではなく、料理や作業用ですが、この村正だけは意味が違うわけです(たとえ、切れなくても)。でも、すべての武器を完全に悪い物とするなら、刀匠の人が人間国宝になるわけもなく、やはり日本刀は単なる殺人の道具とは違ったものの象徴なのでしょう。

 ところで私ゃ思うに、打ち立てならともかく、ある程度使い込んだ刃物の切れ味は、作者よりも研いだ人の責任じゃないですかね。もちろん、研ぎ易さとか切れ味の持続とかはあるかも知れませんが……。
 つまり村正も正宗も、後世に伝わって切り合いに使われたのなら、やはりさすがに名刀は、いい研ぎ士に恵まれたのでしょう。
 そういえば、祖父の家に古い真剣があったような気がしますが、あれはどうなったんだろうなあ。


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