ベースについては立派なことはとても言えない。ただ格好いいからという理由で買っただけです、はい。確か町田のディスカウント・ショップで1万8千円くらいだったと思う。アジアの聞いたことのないメーカーの品である。女性用とかでサイズが小さくなっている。音は一応出るが、どうもチューニングがおかしい。まあ、とてもコンサートでは使えまい。
一応専門と言うか、自分が主に弾く楽器であるキーボードは、バンドでライヴをやる時、はじっこの方で座っているような楽器である。ドラムスは真ん中でギターとベースがその左右か。ヴォーカルがドラムスを隠さないようなちょっとずれた真ん中にいる。だいたい、ギターとベースとヴォーカルは、ステージを歩き回っている。キーボードはドラムスみたいに派手には動かないし、どうしてもその位置に縛り付けられてしまう。
まあ最近はショルダー・キーボードとかの発達でそうでもなくなったのだが、それでもギターとベースは、キーボードに比べて圧倒的に「立って弾く」楽器だ。ところが個人的には、ベースやギターを座って弾く楽器にしているのである(ね、まともな楽器論を期待しても駄目だって言ったでしょ)。
クラシックとポピュラーの一番の違いは、座って演奏するか立って演奏するかである、というのはただの冗談だ。しかし、ギターについてはどうもそんな気がするし、ピアノやオルガンを飛び回って弾くなんてのは、絶対にロックのものである。クラシック系の演奏者は、打楽器やコントラバス、協奏曲の独奏者みたいな場合を抜かして、基本的に座って演奏している。本来なら立って演奏した方がいいんじゃないかと思う木管や金管までもが、オーケストラでは座ったままなのである。
自分の音楽の基礎は何だろう。基本的には、明らかにロックとクラシックである。これは別に珍しいことではない。ディープ・パープルやEL&Pなどの例を上げるまでもなく、そういう人はたくさんいる。ただそれにしても、彼らはロックから何をもらい、クラシックからは何を得たのだろう。演奏法とかメロディとかそういったこと以上に、そもそもクラシックとロックの融合とは何を言うのだろう。
ベースに限らず、座って演奏すると言う行為は、非常に風通しの悪いことだと思う。足を使わず、目は楽譜か楽器そのものを見下ろす。座ったままベースを演奏しながら観客を見つめるというのは、どうもさまにならない。どうしてもこの姿勢では、自分が出している音そのものと正面から向き合ってしまう。逆に立って弾いている時、演奏者の見ているのは聴衆の顔だろう。
音楽はもちろん音で出来ている。座姿勢の演奏は、まさに音そのものを純粋に表現する時のものなのではないかと思う。それが自分の音楽に対する基本的な姿勢なのだろう。少なくとも私がクラシックから得たものは、そういった「音楽に対する基本的な考え方」である。だから、ベースを座って弾くのである。