楽器に関する覚え書き

クロマティックハーモニカ――chromatic harmonica


 しまった、書き忘れていた。という感じである。買ったのはブルースハープと同時期なのに、こちらは大分遅れてしまいました。要するに、ブルースハープでは全ての調に対応できないから買った物だ。

 字義通りに解釈すれば、「半音階のハーモニカ」ということになる。横についているボタンを押すと半音上がり、それで全ての音を網羅する仕組みだ。
 しかしこれはよく考えてみると、ピアノの黒鍵ではない。全ての音が短二度上がるとすれば、「ホ」の音はそのまま「ヘ」になるわけで、その部分は同じ音になってしまう。つまり、ハープ(竪琴の方)のペダルと同じ役割になるわけである。
 そのため、演奏はそれ程易しくない。素早くボタンを押す技を身につけないと、ハ長調(イ短調)以外の曲は結構大変だ。あ、そうじゃないんだ。ボタンを押しっぱなしにすれば、変ニ長調(変ロ短調)の楽器になるもんなあ。

 音はといえば、ブルースハープより音程が安定しているという感じ。つまり、口をつける部分がやや離れているので、角度で音程が変わりにくいのである。これは逆に言えば、ヴィブラートが出しにくいという結果になる。安定したもの程融通が利かず、自由度が低くなるというのは、何だか戦闘機みたいだ。このような事は、楽器の分野でも同じということか。例えば同じ横笛でも、フルートの方が音は安定する。したがって音階は出し易い。その代わり、自由な表現力では能管の方が遙かに高いのである。

 そのため、個人的には今一つハーモニカとしての魅力に欠けるように思う。上に書いたように、ボタンを押すのにある程度の速さがいるというのも問題がある。が、しかし、反面では一本で全ての調に対応することが可能なのも事実なのだ。どうしてもあちら立てればこちらが立たず。これは如何なる分野でもあまり変わらないようである。

宇宙暦38年10月28日)


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