楽器に関する覚え書き

三線――sanshin


 沖縄の楽器である。そっちに旅行した時に買ったもの。昔は蛇皮線と言ったが、最近はこの用語は使わないそうである。
 実はフレットレスの楽器はこれが初めてだったりする(ヴィオラは妻の楽器であって、私は弾けない)。したがって、音程を自分で作るのもこれとテルミンしかない。これは非常に難しく、まずは耳の力が必要になる。といっても、私の知っている(普段使っている)音階は当然平均率なので、琉球の音階がこれでいいのかとなるとさっぱりわからない。東洋の三分損益はピタゴラス音階に近いものだそうである。
 そのような性質上、これはコードを使って伴奏をしたりするのにはまったく向かない。基本的には旋律を演奏するのが主体であり、歌の伴奏の時も旋律を一緒に演奏する。専用の楽譜は「工工四クンクンシー」といい、書店などでも売っている。
 実は三線は、見掛けほど難しい楽器ではない。いや、それはどんな楽器でもこれが易しいということはないのだが、例えばヴァイオリンや尺八のように、最初の敷居が非常に高い楽器ではないのである。前述のようにフレットレスなので、音程を正確にするのはもちろん簡単ではないが、ある程度慣れてくるとそこそこ何とかなるのだ。それに、昔はともかく、今はインターネットというものがある。試しに検索エンジンで「三線」と入れてみれば、弦の張り方から調弦の仕方、工工四の読み方までいくらでも紹介ホームページがある。更に現在は、MP3やフラッシュの発達で、実際に音を聞きながら練習できるホームページまで存在している。ブロードバンドの環境が揃っていれば゛、それらを見ながらある程度弾けるようにもなるだろう。現に私はそうやって練習している。
 ちょっと戸惑うのは、左手で弦を押さえる時、薬指を使わないことである。これはそうでもない流儀はあるらしいが、基本的にはそういうものらしい。最初はこれで結構苦労したものだ。ドビュッシーのように、音楽は出て来る音が重要なのであって、指使いは問題ではない、という考え方を取ればこれはナンセンスなのだろうが、一方では演奏が作法や道と結びついている場合、これは無視出来ない。結局私もこの点は守るように練習しているが、考えてみれば座り方や持ち方がいいかげんなのだから、こんなことにこだわっても意味はないのかも知れないなあ。
 まあ要するに、所詮はすべて我流のものなのである。本当の先生に聞かせたら話にならないのかも知れない。しかしまあ、個人で楽しむ分にはそれでいいと思っている。
宇宙暦37年3月22日)


音楽室に戻る