悪魔くんの吹いているソロモンの笛――。
オカリナのイメージは、どうもこういったアニメや特撮と結び付いている。「キャプテン・ハーロック」のマヤ(もちろん、この曲はコピーして演奏した)、最近の鬼太郎、「赤影」に出て来たカブト虫の怪獣をあやつる笛、「ウルトラQ」のクモ男爵の館にもこれが落ちていた。どうもこの音色の神秘性と、首にぶら下げられると言う携帯性が理由なのだろう。主人公が持って歩けなくては何にもならないからである。これが「さすらいのヒーロー」だと、圧倒的にギターを抱えている奴が多い。そしてその胴体でバンバン敵を叩くのである。壊れたりしないかと心配だ。
それで、初めて買ったのは中学生のころである。400円位のプラスティック製の安物だった。それは失くしてしまってもうない。どこかにしまってあるのだろう。写真にあるのは就職してからの物で、C、F、G、オクターヴ上のCに調律してある。どうしてこんなに必要なのかと言うと、要するに音域が狭いからで、1オクターヴと半分強しかない。持ち替えるのも大変だから、現実には最初からそのように作曲するのがいいのだろう(もちろん、作曲と言うのは楽器との妥協である)。
ところが、オカリナのために作られた曲と言うのは、ほとんど知らないのである。前述のアニメの中に出て来た物と宗次郎の数曲を抜かして、あまり聞いたことがない。今の宗次郎が日本ではもっとも精力的にCD等を出しているのだろうが、その中にも「日本の名曲」の類が入っている。まあ、ケーナやパンの笛もそうだが、民族楽器はその土地の音楽と結び付いているので、こっちが知らないだけなのだろう。ついでに言うと、「大黄河」のテーマはG管で吹くといい。それ以外だと音域が足りなくなる。宗次郎がこの楽器の限界をよく知っており、その性能をぎりぎりまで引きだそうとして作曲している証拠である。
「大黄河」なんかを聴いていると、この楽器はシンセサイザーと相性がいいようだ。それも、「まさにシンセサイザー」というような、絵に描いたような電子音が合うのである。民族楽器には概してそういうところがあるみたいだ。ニューエイジ系でこの手の楽器とシンセサイザーを多用した成果だろう。「大黄河」のCDでオーケストラと共演しているのがあるが、どうもシンセサイザーほど面白くない。ギターのような小規模な楽器になら負けないのだが――。まったく音楽とは不思議なものである。