楽器に関する覚え書き

ショルダー・キーボード――shoulder keyboard


 もう駄目だ。壊れる寸前、いや既に壊れている。一応は何とか使えるのだが――。今のうちに記録しておこう。

 これは確か、8年前に古道具屋で見つけたものだ。6000円だったと思う。8000円かな。とにかくその時は完動品だったのが、子供の玩具になって鍵盤が取れてしまった。ステージで自分で使った事はいちどもない。ただ妻が、ベースのちゃんとしたのを買う前に、保育園のクリスマス会で音源をつないでベースにした。これでも、そのくらいの役には立ったのである。
 一応機種説明をしておくと、これはヤマハのSHS−10、音源を内蔵していてこれだけでも音が出るが、ちゃんとMIDI端子付きである。ミニ鍵盤でベロシティは付かないが、一応ピッチ・ベンダーとポルタメント、ダンパー・スイッチがついている。内蔵音源の音が大したことなくても、これなら充分にステージで使える。更に、ソファかなんかにだらしなく寝っ転がって弾くには、音源が内蔵されている方が都合がいい。問題は、現在の家にソファがないことだ。

 とはいうものの、どうもステージで使う気にはならないのである。別に機種がどうとかいうのでなく、そもそもこのタイプのキーボードが、何かインチキくさいというか、キーボードがこんな形でいいのかなあ、という気がする。
 まず何よりも、これがギターの模倣というか、ギターを弾けないキーボード奏者が、それでも立って弾きたいからこんな物を考え付いたんじゃないかと思ってしまえる点だ。肩からストラップで釣り下げて演奏する姿なんか、エレキ・ギターベースにそっくりではないか。第一、キーボードは両手で弾くものだぞ。
 キース・エマーソンにはショルキーは似合わないと誰かが書いていたが、まったくその通りだと思う。本来持ち上げることが出来ず、体を一定位置に縛り付けるキーボードを、それでも縦横無尽に操ってアクロバティックに弾いて見せたから今の彼があるんであって、ショルキーで自由に歩けるようになってしまっては、何かつまらない。あのリボン・コントローラーは、断じてショルキーと同列に語るべきものではないと思う。
 で、両手で弾けないという理由もあって、これを人前で使ったことはないのである。元来複数の音を同時に出さなくてはならないプログレ系のキーボード奏者にとっては、あまり有用な楽器ではないような気もする。あまりプロのステージを見た事はないのだが、どれだけの人がこのタイプの物を使っているのだろう。

 でも、実は一つ持っていたいのも事実なのである。標準鍵盤のタイプなら、持ち運びの出来るマスター・キーボードのサブになるだろう。一つのシンセサイザーを共用するのにも便利そうだ。つまり、台の上においてしまえばいいのである。また古道具屋で見つけたら、買っておくことにしよう。

宇宙暦31年2月14日)


音楽室に戻る